男として負けだという謎の感情を持っていたのである

 『星川をチャンネル葛葉 アイドル衣装 コス衣装登録したら負け』『いや、別に星川のことなんか好きじゃねぇし』『クソガキじゃん』『可愛いけど別に気にならないから』『星川の配信十五時からか。いや見ねぇけど』彼は、星くずであった。星くずとは星川サラのファン呼称だ。星川サラとはにじさんじ所属のVtuberである。初配信でリスナーを晒し貶しゲラ笑い、普段の配信では調子に乗ったり暴言を吐いてはゲームや雑談をし、いわゆるクソガキの様な振る舞いが特徴的な星川サラである。ルビーとシトリンの澱みない金銀妖瞳は一度見惚れたらこちらの心を掴んで離さないだろう。瞳と同じ二色のリボンから流れる金色のサイドポニーは彼女の太もも程の長さまである。特徴的なのは服装もであり、肘まで脱ぎかけた大きめの白いパーカー、包まれるような彼女の華奢な身体には胸の下で縛った背中の開いたトップスとホットパンツ。そしてタンガと呼ばれる際どい下着がそれらから覗く。その可愛さと色っぽい格好のために、性的な目で見たことがあるにじさんじライバー第一位として輝いてしまったこともある。この男は星川サラというVtuberが大好きであった。しかし、それを認めてしまうのは何故か、こう、男として負けだという謎の感情を持っていたのである。よくエロ漫画で読む「こ、このメスガキの分際で……!」的なあの感情に似ている。それもこれも、星川が可愛いのがいけないのである。特にぱあっと笑った時の顔は最高だ。配信中にメンバーに入った時のお礼の言葉なんて録音して何十回も再生した。でも星川の事が好きなのは認めない。そういうことなのだ。だって認めたら負けなのである。誰と戦ってるの? 己。『いやぁ星川なんだわ』『え? いや、星川のことなんか全然好きじゃないけど』 だが、知ってるだろうか? 星川は、エゴサが得意だ。いいねが飛んでこなくても、それらはしっかりと彼女の目に入っているのだ。あろうことか毎日毎日、同じようなことを呟いているものだから、VTuber 笹木咲 コスプレ衣装認知されていないはずがない。しかし、男はエゴサというものの存在を忘れていた。 そしてもう一つ、男はある意味でミスを犯していた。それは――。「やっほ!」「は?」この季節、彼は就職先が決まって遥々遠方から東京へと引越しをしてきた。その作業が終わった写真をTwitterに載せたのである。自宅周りと、それから部屋の中を。つまり何が起きたのか、というとだ。なぜ目の前に、あの星川サラが居るのだ。「めっちゃ意外そうな顔するじゃん」男の顔を見て星川は吹き出してしまった。「……これは夢?」「んなわけないじゃん」

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