ことに、朝の5時に目が覚めた。朝帰りでこの時間に起きていることはあっても、この時間に目覚めることは、あまり記憶にない。いつもと違う部屋の空気と外の空気に、好奇心が湧き出る。初めての場所に来たときのように、全てが新鮮だった。好奇心に駆られて、外に出る。自分にも可愛い幼心が残っていたのだと、朝から笑ってしまう。早朝の空気は良い。こっちの空気の方があたしの身体によく馴染む。昼間の空気は汚れているから嫌いだ。排気ガスだとかの問題だけじゃなく、意地が悪い人間たちが沢山活動していると考えるだけで、少し気持ち悪くなる。きっと昼間のあたしは、全てに諦めた顔をしてしまっているだろう。今のあたしの方が、いくらか人間らしい顔をしているはずだ。久しぶりに訪れた清々しさに浸っていると、遠くで電信柱に寄っかかって座っている女らしき人が見えた。この時間帯のああいう人間は、殆どが酔っ払いだ。そして、あたしの心に悪魔と天使が現れた。「自業自得だ。放っておこう。」「本当にしんどいのかもしれない。助けなきゃ。」という2つの心が一進一退の戦いを脳内で繰り広げている。うだうだ悩んだ。これぞ優柔不断。「あー、もう!」と心の中で叫ぶ。早歩きで人がいる方に向かう。これも早く真っ当な人間になって早く死ぬ為だと自分に言い聞かせた。電信柱に居たのは女の人だった。華奢で、小柄で、色素の薄い髪色をしていた。劣等上等 レイヤ コス衣装顔を伏せているので、表情は分からないが、とりあえず声をかけてみる。「あの、大丈夫…ですか?」あたしの声に反応して、その人は少し気怠そうに顔を上げる。ひどく色白で、透き通った空色の目をしていた。儚さを感じさせる、おそらく年下の女の人だった。
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