固唾を飲んで一同の顔を見渡すと、最後に有咲の両目を見つめて深く頷いて、次の瞬間、一息で、顔の高さまでスカートを持ち上げた。「だーーーーー!? 高くないですか!?」有咲が顔を赤くして叫ぶとほぼ同時、彼女の太ももの間から子猫が飛び出した。薫が上体を使って行く手を遮ろうとするが、子猫は軽やかな挙動で薫の腕に飛び乗り、休むことなくテーブルに向かって踏み切る。こんにゃろ。口の中で呟きながらますきが腕を伸ばすが、子猫は間一髪のところでそれを潜り抜け、テーブルを蹴り、つぐみへ向かって飛び掛かった。「わわっ!?」正しく不意打ちであったため、両手が塞がっていたつぐみはウォンバットを突き出すのが精いっぱいであった。どデカい曲面に着地した子猫は、四肢を高速で動かしてなんとか留まろうとしたが、叶わず、別の足場への落下を選択する。別の足場とは、即ち、薫のスカートめくり以降一歩も動かずに状況を見守り続けていた、友希那の脳天である。「っ」勢い、友希那は項垂れる。「やんちゃ坊主が……!」「友希那――っ!」ますきと薫が口を動かしながら駆け寄ろうとする。直後、両腕を広げてふたりを制したのは、他ならぬ友希那であった。「ふたりとも、動かないで。もう大丈夫よ」「友希那……?」「時々いるのよ、こういう子が」「どういう子っすか?」「お昼寝のし易い、くぼみが大好きな子よ」子猫はすんすんと二重の虹 山吹沙綾 コス衣装鼻を鳴らしながら友希那の肩へ降り、首筋に額を擦り付けて髪の柔らかさを確かめると、こてん、とその場に寝転がった。それで、ああ、とますきは静かに頷く。来店直後に目にしたこの場所=年頃の少女の首筋が、柔らかさとサイズがドンピシャの、子猫にとって絶好のベッドということなのだろう。「寝たかしら」友希那の呟きに、彼女の正面に傅いた薫が頷く。
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