「蘭ちゃん!競演のステージ 白金 燐子 コスプレ衣装
これなんてどうかな?」「らーん……こういうのはどうー?」「蘭!こっちの方がいいぜ!」「……一回、全部着てくる」「ストップ、蘭」色とりどりに衣服が並ぶショッピングモールの一室には五人の団体客がいた。羽沢つぐみ、宇田川巴、青葉モカの三人が持っている服を抱えて着替え室に入ろうとする美竹蘭を上原ひまりは前に立ち止める。「一度、冷静になって」春コーデとは思えない森ガール風のもこもこした服や引かれるレベルのゴスロリチックな刺々しいドレス、さらに妹のセンスに毒されてしまったのか、格好はTシャツにジーパンとまともだが装飾がまがまがしいデザインのシャツにアクセサリー、ブレスレットを藁にも縋る思いで蘭は抱えていた。普段なら絶対に着ないような服でも今の蘭なら鵜呑みにして着てしまう。それほどまでに必死なのだ、蘭は。そして、そんな恋路を邪魔する奴らも。こんなのを勧めやがった馬鹿共を怒鳴りたくなったが店内であることを思いだしてひまりは止めた。「一日中動くんだからこんな服装じゃダメでしょ!もっと動きやすくて蘭らしい服装の方が相手は喜ぶんじゃないかな?」「私らしいのが好きって……紗夜さんは私のことが好きってこと?」しらねぇーよ!喉元まで出そうになった本音をひまりは飲み込んで照れている蘭の言葉に触発されたであろう三人を横目で見た。嫌悪感を隠そうともしない巴に苦虫をかみつぶしたようなモカ、さらに羽沢珈琲店の看板娘がしてはいけない表情をするつぐみ。根底にあるのは自分と同じ蘭への心配はずなのにこうも違ってくるのか。蘭が送ってきたラインを思い返してひまりは大変なことになったなー、とガラス窓越しの太陽を見つめた。夕暮れ時、夜を知らせる暗い影が差し始めた頃に美竹蘭と氷川紗夜は徒歩で目的地だったレストランまでたどり着いた。大学生になったとはいえ数ヶ月前まで制服に身を纏った高校生の蘭には敷居の高いレストランだった。しかし、場違いを感じさせるのは別にきらびやかなシャンデリアや高級感の漂う装飾品が龍、舞い踊る! 弦巻 こころ コスプレ衣装置かれているわけではない。むしろ質素とも言ってもいい飾り付けだが、その質素な店構えには厳かさと大人びた雰囲気が同居している。蘭もこういう店には父達と来ることがあったが、それは親の付き添いとして子供という立場で利用していただけで一人の客として入り口をくぐるには覚悟が必要だった。
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