不思議に3周年 北沢はぐみ コスプレ衣装
感じることがある。不可解に思うことがある。不理解に苦しむことがある。誰かの何かを不思議に思うのであれば、それはその人に問えばいい。どうしてそう思うのか、どうしてそうしたのか、そうやって、弦巻こころは未知を既知に変えてきた。けれど、今、分からないのは自分自身のこと。こころ自身を、こころが分かっていない。自分の胸に手を当てる。心臓が動いているのがわかる。────トクン────トクン────。静かに、確かに、『生きている』を主張する。鼓動は基本的に一定で、きっとそれで十分であり、それが精一杯。そのはずなのに──。『──こころ』と、優しい声が鼓膜を揺らす時。声の主がすぐそばに居る時。『──美咲』と、その人のことを想う時。 ──トクン──トクン──トクン──。 鼓動は唐突に、忙しそうになる。『生きている』だけじゃない何かを叫ぶように、体の内側から鼓動が打ち付けてくる。加速する拍動が何を意味するのか、こころは知りたい。そんなことを考えていると、一日はあっという間に通り過ぎていった。最後の授業とホームルームが終わり、教室から生徒たちが出ていく。こころはというと、いつもなら飛び出していくはずが、今は教室に残っている。珍しく、考え事に夢中になっていた。抱えたこれを、決して嫌なものだとは感じていない。治療が必要な病気だとも、ただ──。「──時々、ちょっと苦しくなってしまうのはなんでなのかしら?」甘く、切なく、締め付けるような痛みに似た何か。こころの知らない何かが、胸の奥に形を成している。以前感じたモヤモヤとした雲みたいなものに覆われるのとは似ているようでまた違う感覚。はてと、こころは首を傾げる。──こんなモヤモヤとした気持ちを知ったのはいつだったかしら。もう誰もいなくなった教室で、今日の役割を終えた黒板を見つめる。消した跡が何かの模様に見えた。そんな思考を遠ざけるように、教室のドアがスライドする。あ──。感嘆にも似た息が零れる。「こころ」名前を呼ばれて、胸が跳ねた。そうだった。「──両方とも美咲だわ」モヤモヤするのもギュッとなるのも、心の真ん中には美咲が、今しがたこころを呼んだ存在がいた。小さく呟くと、美咲が首を傾げながら3周年 弦巻こころ コスプレ衣装こころに向かって歩いてくる。「何か言った?」「え?」「いや、今。何か言わなかった?」そんなやり取りをしている間に、美咲がこころのすぐ側まで来ていた。 ──トクン──トクン──トクン──。高鳴り出したら止まらない鼓動。美咲にも聴こえてしまうのではないかと、こころは思った。「こころ?」不思議そうに、美咲が再び名前を呼ぶ。身体が浮き出してしまいそうな気分だった。「いいえ、なんでもないのよ」「? そう?」ええ、と頷く。説明しようとしても、こころ自身が分かっていないのだからどうしようもない。「にしても珍しいじゃん。いつもなら授業終わったらすぐ呼びに来るのにさ」
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