リハーサルを終えて楽屋で休憩をしていると、ルシアが声をかけて来た

 「トワ様5期生 桃鈴ねね コスプレ衣装から?」『壊した物、返すから』メールで来た短い文章に首を傾げる。何か返信するべきかと考えていると、電話が鳴った。『今日、大丈夫?』着信はマネージャーからだった。昨日会った時点で調子が悪いのを感じ取っていたらしい。「ん、何が?」のんきな声で答える。いらない心配をかけて面倒な事になるのは嫌だった。『本当に? 調子悪かったら早めに言ってね。今ならプログラムも組み直せるから』通り過ぎて行く特急の風にあおられて、少し寒気を感じた。ブルッと背中が震えた。「うっ、大丈夫ぺこ」『怪しいわねえ……』「心配性ペコねえ」『声枯れてない? あーって言ってみて』「……今駅なんだけど」『そんなの気にしない。あー、はい』本当に心配性なのだな。と思いながら、仕方なく「あー」と声を上げる。周囲の視線が集まったような気がして顔が赤くなる。『……声は大丈夫ね』「だから大丈夫ペコ!」声を荒げて電話っを切った。「今から中止は無いでしょ」今日は3期生のライブだった。本来は先月にやる予定だったものだが、メンバーの体調不良によって延期になり、今日は再公演だった。スタッフたちも、メンバーの体調に関しては過敏になっていた。呟いて空を見上げた。雲が垂れ込めた空は、今にも降り出しそうだった。「ここが踏ん張りどころペコ」こぶしを握り締め、急行列車に乗り込んだ。座って目をつぶると、瞼の裏にはパソコンの作業画面が写っていた。少々休養が必要らしいと、彼女は思った。「珍しい物飲んでるね」リハーサルを終えて楽屋で休憩をしていると、ルシアが声をかけて来た。ほかのメンバーも気が付いてこちらに注目する。「何か置いてあったから」ぺこらは自分が飲んでいる栄養ドリンクをかざして見せた。いつも飲んでいる牛乳の横に置いてあったのだ。「あー。さっき、ぺこらのマネちゃんが『なんか調子悪そうだったから……』って買いに行ってたよ。大丈夫ー?」自分の汗を拭きながら宝鐘マリンが振り返る。「ちょっと風邪っぽかっただけペコよ」「大丈夫なの?」ルシアが観察するような顔をした。「疲れが溜まってるだけぺこ。5期生 雪花ラミィ コスプレ衣装目を閉じるとゲーム画面が見えるの」「ああ、それ私もある」 ルシアもそうなのかと少しホッとする。「そういう時って、世界が崩壊したのかって思うよね」「何言ってるぺこ?」「知らないの? 有名な数学者さんの研究だと、この世界って六〇パーセントくらいの確率でプログラムなんだって」首を傾げる。言っている意味が分からない。

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