「凧揚げ陽葉学園 渡月 麗 冬服 コスプレ衣装しない?」って由香が言ってきた。ご親切に二人分の、しかも子供用って一目でわかる凧を持ってきて。え、こんな寒い中で? わざわざ公園に来て? この後練習すんのに? めっちゃ注目されそうなやつを? えー……やだ。「誰がそんな子供っぽいの……」「まだまだ私達高校生でしょ? それにしのぶは外に全然出ないんだし!」「は、ハンゾウの散歩で出てるし……」「足りない分は私が面倒見てあげる!」「やーめーろー!」逃げようと思ったけど、筋肉を味方につけた由香から逃げられるはずなんてなく。無益な争いをするくらいなら凧揚げに付き合った方がいい、と思って、んで、今。離れたとこでそれぞれ揚げてる、ってわけ。……これ、楽しいか?あ、由香、こっちに手振ってる。めっちゃ笑。楽しいんだな。……まあ、いっか。 凧揚げなんていつぶりだろうな。じいちゃんと一緒にやってたっけ。昔はなんでもじいちゃんと一緒で、母さんや父さん、姉ちゃんや兄ちゃんよりべったりだったらしいってさ。「今もじゃねーかっ」……渚、お前、テレパシー使えたのか……? ってんなわけあるか! 気のせいか……。じいちゃんとやった時も、こんな風にホームセンターでゲームの絵柄がプリントされた、チャチな子供向けのやつでやってたな。ふわふわ舞う凧。頼りない糸。風に攫われないように掴む手。その向こうの、青い空。どこまでも広がりそうな世界で、アタシの背はもう限界を知ってて、育ち盛りだろう子供の声が由香とじゃれてるのが聞こえる。……今見るとアタシ、こんな安っぽいプリントに騙されたのか、って鼻で笑いそうになるけどね。でも騙される経験って、大事だと思うんだよ。恥ずかしいけど、アタシだってサンタの陽葉学園 大鳴門 むに コスプレ衣装存在を信じ笑ってたただのガキだった頃があったんだ。そういう時、じいちゃんは「何かに盲信する時期があったってヤツは伸びる」言ってくれたんだ。そん時、なんかさ……恥ずかしくて、どついてやりたかったけどね。じいちゃんも歳だからやばいなと思って遠慮したよ。大人になったよな、アタシも。でもまだまだ伸びしろがあるって思うから子供だなってじいちゃんは笑ったね。 ーーアタシをお姫様って言ったあの時の響子も、そして今の響子も、同じなのかな。
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